グリーン・ニューディール―環境投資は世界経済を救えるか (生活人新書)



グリーン・ニューディール―環境投資は世界経済を救えるか (生活人新書)

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参考価格:¥ 735 (消費税込)


環境投資を通じた経済発展の重要性についてわかりやすく説明する非常に啓蒙的な良書良書
本書は第1部としてオバマ大統領の元での環境を重視した政策転換「グリーンニューディール」の取り組みと、第2部として日本における環境及び経済政策の現状、問題点、今後の展望をコンパクトにわかりやすく説明する。
本書を通じて、太陽光発電、風力発電など再生エネルギーへの転換、それを通じた投資・雇用の拡大が次の時代の国及び地域にとって主要な政策になることを痛感させられる。
日本が今後十年程度どのようにしてメシを食っていくか、その示唆を与えられ、読者に行動を促すような良書である。

深手を負うも米経済のダイナミズムは健在、日本経済が再び逆転される予兆
環境政策は既に産業政策と化しており、自称「環境大国」日本はその王座から滑落するであろう(いや、もう手遅れか)。この本を熟読して確信した。戦略眼と中長期的な視点において我々は既に欧米に敗北しているからである。

日本では内需が駄目だ駄目だと言われるが、代替エネルギー分野は宝の山である。それを教えてくれるだけでも当書は素晴らしい。是非民主党と自民党の幹部に百冊ほど大量に配りたいものである。太陽電池と風力発電だけで膨大なインパクトがある。それを嫌うのはテリトリーを脅かされる電力業界とそこに天下る官僚くらいだ。

日本が太平洋戦争で初めて運用した機動部隊を即時取り入れて大規模展開し、完膚なきまで日本を叩きのめしたのが米国である。我々は戦略思考において極端な劣位にある。「今までボクが一番頑張って省エネしてきたんだあ?」と無意味な駄々を捏ねるのを止め、空虚な自信を捨て、自国の強みと弱みを知悉して5年先、10年先の日本経済を見据えた環境戦略、産業戦略が必要である。

既にグリーン雇用がアメリカ経済を底支えしていること、旧東独のチューリンゲン州は風力発電製造で活況を呈していること、日本でも室蘭が風力発電に大きく期待していること等、当書は実に素晴らしい内容であるが、何点か不満もある。

日本は北欧のようなバイオマス熱利用を拡大させる余地が大きい。また、地形と降雨量から見て小水力発電にかなりのポテンシャルがある筈だ(特に東日本、丸紅が既に事業参入している)。是非こちらも収録して欲しかった。他にも国内にはヒートポンプや薄膜太陽電池のような素晴らしい先端技術がある。それらの活用法の提言もできたであろう。

今まさに転換点
この本でいいたいのは日本がアメリカに比べてどれくらい遅れているかということです。それは実質的な環境政策が遅れているのではなく、長期的な視点、自動車産業から環境産業へのパラダイムシフトに対するビジョンが明確でないまま現在の転換点を迎えてしまっているということだと思う。

内容は、09年3月19日にNHKの特集番組『グリーンニューディール』の内容を本にした感じ。その番組には日本総合研究所会長 寺島実郎氏、環境エネルギー政策研究所所長 飯田哲也氏の両氏が出演されていて、本書でもコメントをしています

前半の7章は主にアメリカの政策について、後半は日本の政策の遅れについて書かれてあります。
アメリカについていろいろな事例が書かれてありますが、一番重要なことは、アメリカが
・2015年までに100万台のプラグインハイブリット車を走らせる
・2050年までに温室効果ガスを90年比で80%削減する
・環境に優しいエネルギー技術の発展に10年で15兆円を支出する
と宣言していることだと思う

それに対して
・経産省、環境省、農水省など省庁縦割りの壁が厚く、連携を図れない日本
  「新エネルギー社会推進室」を独自に設置する経産省
  「日本版グリーン・ニューディール」を打ち出す環境省 などなど
・固定価格買取制度導入を突然発表した経産省
・技術力はあるのに国内にマーケットがあまりなく、なかなか成長しない風力メーカー
・風車を建てたいのに買い取り価格が上がらないためあきらめざるを得ない自治体
といったように日本の空回りした政策が書かれてありました。

終わりに飯田氏はこう述べています
「自然エネルギー部門はここ数年の伸びは年率60%、年間15兆円規模の産業になっている。今後10年余りの間に自動車産業に追いつき、追い越す勢いである。」

日本の政治的リーダーシップを発揮して政策を進めないと、産業の大きな転換点において、世界でイニシアティブをとることができなくなってしまうと感じた1冊でした。




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